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ep6 正統なる吸血姫

작가: 根上真気
last update 최신 업데이트: 2025-03-14 17:15:46

「えっ、わたし、なんかマズった?」

リザレリスにはなんの悪気もなかった。むしろ他意もなく素直で正直と言えよう。

「王女殿下」気を取り直したディリアスは改まった口調で答える。「我々は、初代ブラッドヘルム王が何処へと去っていってしまってから五百年間、別の王を立てながらもリザレリス王女殿下の目覚めをずっと信じ、何代にも渡って待ち続けていたのです」

「そ、それはさっき聞いたけど」

「なぜ我々がそこまで、眠り姫となった王女殿下の目覚めを待ち続けたと思いますか?」

「な、なんだろ。特別だから?」

「さようです!リザレリス王女殿下!貴女は特別なのですよ!」

急にディリアスのスイッチが入った。顔つきの変わった中年紳士にリザレリスはにたじろぐ。

「は、はい?」

「ブラッドヘルム王なき後のこの国を、再び誇り高き吸血鬼の国として再興できるのは、正統なプリンセスである貴女しかいないのです!」

「は、はあ」

「今の王女殿下にはおわかりにならないでしょう。現在の〔ブラッドヘルム〕の窮状を」

ディリアスの表情に深刻さが帯び始める。

「きゅうじょう?貧乏ってこと?」

リザレリスの質問に、ディリアスは重々しく頷く。

「これはまだ説明を控えていたことです。王女殿下がショックを受けてしまわれないために」

「えっ、ひょっとしてこの国、ヤバいの?」

リザレリスの胸に不安が立ちこめる。

「はい。現在、我が国の経済は逼迫しております」

「ま、まさか、破綻寸前とか?」

「長年の友好国であった〔ウィーンクルム〕との貿易が完全に打ち切られてしまったなら、あるいは......」ディリアスは明言を避けた。だが意味は明白だった。

リザレリスは落ち着きなく視線を彷徨わせてから、ガタンと立ち上がる。

「じゃあ俺...わたしは、今にも滅びそうな、没落した吸血鬼の国の王女様ってこと?」

リザレリスの辛辣な物言いにも、ディリアスは頷くしかなかった。

「滅びると決まったわけではありませんが......」

「いや、ちょっと待ってくれ」

ここでリザレリスは頭の中で話を整理する。状況はわかった。しかし、伝説の吸血鬼の娘の正統なプリセンスが復活したというだけで、果たして国が再興できるものなのか?

「王女殿下」そこへリザレリスの心中を察したようにディリアスが言う。「我々ブラッドヘルム国民にとって、初代国王ヴェスペリオ・リヒャルト・ブラッドヘルム陛下の存在は、まさしく神に等しいのです」

「神......」

「他国では、時に揶揄として〔ブラッドヘルム〕のことを、過去の伝説伝承に縛られた古臭い宗教国家だと言うことがありますが、それもあながち間違ってはいないのです」

「つまり、わたしは......」

「さようです。リザレリス王女殿下は、いわば女神のような存在となりうるのです。実際、殿下の母君であるロザーリエ王妃が、まさしくそのような存在であったと言い伝えられています。ロザーリエ王妃は、当時のウィーンクルム王女でありながらヴェスペリオ王と愛し合い結ばれて我が国の王妃となった方なのですが、ブラッドヘルム国民を愛し、そして国民からも大変愛された女神のような方だったそうです」

「そ、そうなんだ」

「そして王女殿下こそ、ヴェスペリオ・リヒャルト・ブラッドヘルム王とロザーリエ・テレジア・バッヘルベル王妃、その御二人の血を引く吸血姫なのです」

「究極のサラブレッドってことか......」

「はい?」

「いや、なんでもない」

「だからこそです!」

ここで再びディリアスが目を見開いた。

「な、なんすか」

びくっとするリザレリスに、ディリアスは鋭い眼差しを向けた。

「王女殿下には、血の薄くなってしまった我々とは違う、正統なる吸血鬼の御姿をお見せしていただきたいのです!その姿は、今や廃れてしまった吸血鬼の国〔ブラッドヘルム〕の国民にとって、強き希望の光となるのです!」

「せ、正統なる吸血鬼の姿って......」

「恍惚と人間の血をすする吸血鬼の姿です!」

ディリアスの声が広い部屋に響き渡った。周りの者たちは皆、熱い表情で手を握り合わせている。その通りだと。

ついていけていないのは、やはりリザレリス本人だけだった。

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